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遠方の実家を立ち会わずに売る方法

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制度に関する情報は 時点で公式サイトを確認しています。最新の内容は記事末の出典でご確認ください。

実家が遠方にあると、売ろうと思っても「そのたびに現地へ行くのは難しい」と感じる人は多いと思います。仕事や家庭の事情で、何度も往復するのは大きな負担です。

不動産の売却は、以前は書類のやりとりや契約を対面で行うのが基本でした。現在は、法律の改正によって契約に関わる書面を電子で受け取れるようになり、登記の申請も郵送でできます。この記事では、遠方の実家を、できるだけ現地に行かずに売るための進め方と、それでも現地で確認したほうがよい場面を整理します。

現地に行かずに進められること

売却の流れにそって、現地に行かずに進める方法をまとめると、次のようになります。

段階 現地に行かずに進める方法 根拠・出典
相続登記 法務局に郵送で申請する、または司法書士に依頼する 東京法務局「よくある質問」
査定 複数の不動産会社に依頼し、結果を書面やメールで受け取る —
媒介契約(売却の依頼) 承諾すれば、媒介契約の書面を電子で受け取れる 宅地建物取引業法第34条の2
売買契約 承諾すれば、契約内容の書面(37条書面)を電子で受け取れる 宅地建物取引業法第37条
決済・引き渡し 司法書士に登記を依頼し、必要なら家族などを代理人にする 民法第99条

ただし、どこまで対応できるかは不動産会社や司法書士によって違います。依頼する前に、遠方の売主にどう対応しているかを確認してください。

ステップ1:相続登記を遠方から済ませる

相続した実家を売るには、先に名義を親から相続人へ変える相続登記が必要です。必要な書類は相続した実家を売る流れと必要な書類で一覧にしています。

相続登記の申請先は、実家の所在地を管轄する法務局です。東京法務局の「よくある質問」では、郵送で登記を申請したあとに、登記識別情報や原本の書類を郵送で受け取る方法が案内されています。たとえば、個人が自分の住所あてに登記識別情報の送付を希望する場合は「本人限定受取郵便」で送られ、そのための郵便切手を同封します。

戸籍などの書類集めや申請書の作成に不安がある場合は、司法書士に依頼する方法もあります。

ステップ2:遠方の売主に対応できる不動産会社を選ぶ

遠方から売る場合、不動産会社とのやりとりはほとんどが電話・メール・郵送になります。査定を頼む段階で、次の点を確認しておくと、あとで困りにくくなります。

  • 現地の確認や、買い手の案内(内覧)を誰が行うのか
  • 鍵をどう預けるのか、誰が管理するのか
  • 販売の状況をどの方法で、どのくらいの頻度で報告してくれるのか
  • 契約書などの書面を、郵送や電子で受け取れるか
  • 売主が現地に行く必要があるのはどの場面か

専任媒介契約・専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社には、販売状況を定期的に売主に報告する義務があります。媒介契約の種類と報告の頻度は、古い実家を売る方法:仲介と買取の違いで整理しています。

仲介で買い手を探す場合、内覧の対応や販売の期間が長くなるほど、遠方の売主の負担は増えます。不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」は、買い手を探す期間がないため、やりとりの回数を減らしやすい売り方です。ただし、一般に仲介より価格は低くなりやすいため、両方の査定を比べてから選んでください。

ステップ3:契約の書面を電子で受け取る

2022年5月18日に施行された宅地建物取引業法などの改正で、不動産取引のときに交付される書面を、紙ではなく電子で受け取れるようになりました。

書面 どんな書面か 電子で受け取る条件
媒介契約の書面 不動産会社に売却を依頼したときの契約内容 依頼者(売主)の承諾(第34条の2)
契約内容を記載した書面(37条書面) 売買契約が成立したときの、代金・引き渡しの時期・登記の時期などの内容 契約の当事者の承諾(第37条)

国土交通省は、書面を電子で提供するには、事前に相手方の意向を確認して承諾を得る必要があるとしています。紙での交付も引き続き選べるので、どちらにするかは不動産会社と相談して決めます。

国土交通省の消費者向けの案内では、電子書面のメリットとして、保管や検索がしやすいことや、電子契約の場合は印紙税がかからないことが挙げられています。一方で、端末の操作に慣れていないと内容を確認しにくいことや、端末の不具合などで後日見られなくなる可能性があることも、留意点として挙げられています。電子で受け取った書面は、自分でも保存しておきましょう。

なお、契約の前に宅地建物取引士が行う「重要事項説明」は、買う人に対して行われるものです。オンラインで行うこともできますが、売主が説明を受ける手続きではありません。

ステップ4:決済・引き渡しを代理人や司法書士に任せる

売買代金を受け取り、名義を買主に移す「決済・引き渡し」は、売主・買主・不動産会社・司法書士などが関わる大事な場面です。遠方で立ち会えない場合は、次のような方法を不動産会社や司法書士と相談します。

家族などを代理人にする

民法では、代理人がその権限の範囲で本人のためにすることを示して行った意思表示は、本人に直接効力が生じるとされています(第99条)。たとえば、実家の近くに住む兄弟姉妹や親族に、委任状を渡して手続きを任せる方法があります。

代理人に任せるときは、委任状に 何を任せるのか(範囲) をはっきり書いてもらうことが大切です。また、委任を受けた代理人は、本人の許諾を得たときや、やむを得ない事情があるときでなければ、さらに別の人に任せる(復代理人を選ぶ)ことはできません(第104条)。

登記識別情報を用意する

売った家の名義を買主に移す登記では、売主(登記義務者)の 登記識別情報 を提供する必要があります(不動産登記法第22条)。相続登記が終わると、法務局から新しい所有者に通知される情報です。

登記識別情報が見つからないなど、提供できない正当な理由がある場合は、次のような方法が法律で決められています(第23条)。

  • 法務局から売主に通知が届き、売主が期間内に「申請は間違いない」と申し出る方法(事前通知)
  • 登記の申請を代理する司法書士などが、売主本人であることを確認した情報を法務局に提供する方法
  • 公証人から、売主本人であることを確認する認証を受ける方法

どの方法が使えるか、どのくらい時間がかかるかは、依頼する司法書士に早めに相談してください。

本人確認が行われる

不動産会社が宅地や建物の売買契約の締結やその媒介を行うときは、犯罪収益移転防止法にもとづき、顧客の本人確認(取引時確認)を行う義務があります(第4条・別表)。個人の場合、確認する事項には、氏名・住居・生年月日、取引の目的、職業が含まれます。司法書士も、同じ法律の対象になっている事業者です。

遠方の場合、本人確認の方法(郵送か、オンラインか、面談が必要か)は事業者によって違います。代理人が手続きをする場合は、代理人本人の確認も必要になります(第4条第4項)。何を用意すればよいかを事前に確認しておきます。

それでも現地で確認したほうがよい場面

すべてを遠方から進められるとは限りません。次のような場面は、一度は現地に行くか、信頼できる家族に確認してもらうと安心です。

  • 家の中の物の片付け:残す物と処分する物を決める作業は、できるだけ自分で確認したい部分です。業者の選び方は実家の片付け・遺品整理の費用相場と業者の選び方で整理しています
  • 家の状態の把握:雨漏りや設備の不具合など、売主が知っていることは不動産会社や買主に正確に伝えます。家が契約の内容に合っていない場合、売った後に責任を問われることがあります(民法第562条など)
  • 土地の境界:隣の土地との境界がはっきりしない場合、測量や隣の所有者との確認が必要になることがあります。必要かどうかは不動産会社に確認してください

国土交通省の消費者向けの案内でも、オンラインで説明を受ける場合について、画像だけでは分からない物件の状況があるため、別に現地を確認することが有効だとしています。売る側にとっても、現地を見ないまま判断することには限界がある、と考えておくとよいでしょう。

売るまでの間の管理も忘れずに

売れるまでの間も、実家の所有者として管理を続ける必要があります。空き家の管理が行き届かないと、市区町村から指導や勧告を受けたり、固定資産税の軽減が受けられなくなったりすることがあります。詳しくは空き家を放置するとどうなる?固定資産税と管理の負担で整理しています。

まとめ

  • 相続登記は郵送で申請でき、司法書士に依頼することもできる
  • 媒介契約や売買契約の書面は、承諾すれば電子で受け取れる。電子契約なら印紙税がかからない
  • 決済・引き渡しは、委任状で家族などを代理人にしたり、司法書士に登記を任せたりできる。任せる範囲は委任状にはっきり書く
  • 名義を移す登記には登記識別情報が必要。見つからない場合の方法も法律で決められている
  • 片付けや家の状態の確認など、一度は現地で確認したい場面もある

売った後の税金については、相続した空き家を売るときの税金と特例で整理しています。

出典・参考