相続した実家を売る流れと必要な書類
制度に関する情報は 時点で公式サイトを確認しています。最新の内容は記事末の出典でご確認ください。
親が亡くなって実家を相続したものの、誰も住む予定がない。そんなとき「売る」は有力な選択肢のひとつです。ただ、相続した家は、自分で買った家を売るときとは違って、売る前に名義の手続きが必要で、そのための書類も集めなければなりません。
この記事では、相続した実家を売るまでの流れを5つのステップに分け、相続登記に必要な書類を一覧にしました。売る以外の選択肢(解体する・残して活かす)と迷っている場合は、解体と残すの記事もあわせて読んでみてください。
全体の流れ(5ステップ)
- 相続人と遺言を確かめ、誰が相続するかを決める
- 書類を集めて、相続登記をする(名義を親から相続人へ変える)
- 査定を受けて、だいたいの価格を知る
- 売り方(仲介・買取など)を選んで、売却する
- 売った後の税金を確認し、必要なら確定申告をする
順番に見ていきます。
ステップ1:相続人と遺言を確かめる
まず、誰が実家を相続するのかをはっきりさせます。
- 親が遺言書を残していないかを確認する
- 遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をして、誰が実家を引き継ぐかを決める
- 兄弟姉妹など複数人で引き継ぐ(共有名義にする)場合は、売るときに全員の同意が必要になる点に注意する
どのパターンで相続するかによって、次のステップで集める書類が変わります。
ステップ2:書類を集めて、相続登記をする
家を売るには、登記簿上の名義を亡くなった親から相続人へ変えておく必要があります。これが 相続登記 です。
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。法務省の案内によると、ポイントは次のとおりです。
- 相続で不動産を取得したことを知った日から 3年以内 に登記する
- 正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料 が科される可能性がある
- 2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合は 2027年3月31日まで に登記する必要がある
相続登記に必要な書類(遺産分割協議で決めた場合)
法務局の資料「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」をもとに、遺言書がなく、相続人の話し合い(遺産分割協議)で実家を引き継ぐ人を決めた場合の書類をまとめます。
集める書類
| 誰の書類か | 書類 | どこで入手するか | 補足 |
|---|---|---|---|
| 亡くなった親 | 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | 本籍地の市区町村 | 出生から死亡まで、在籍していたすべての戸籍が必要 |
| 亡くなった親 | 住民票の除票、または戸籍の附票 | 除票は住所地、附票は本籍地の市区町村 | 登記簿上の住所と、戸籍の本籍が異なる場合に必要 |
| 相続人全員 | 戸籍謄本(抄本) | 本籍地の市区町村 | 親が亡くなった日以降に発行されたもの |
| 相続人全員 | 印鑑証明書 | 住所地の市区町村 | 遺産分割協議書に押した印鑑のもの |
| 相続人 | 固定資産課税明細書 | 毎年4月ごろ市区町村から届く | 登記を申請する年度のものが必要 |
| 実家を引き継ぐ人 | 住民票 | 住所地の市区町村 |
自分で作る書類
| 作る人 | 書類 | 補足 |
|---|---|---|
| 実家を引き継ぐ人 | 登記申請書 | |
| 相続人全員 | 遺産分割協議書 | 誰が実家を引き継ぐかを記載 |
| 実家を引き継ぐ人(または代理人) | 相続関係説明図 | 戸籍の原本を返してもらいたい場合に作る |
| 実家を引き継ぐ人と代理人 | 委任状 | 司法書士などに依頼する場合のみ |
戸籍・除籍謄本や印鑑証明書などに 有効期限はない とされています。また、本人・配偶者・父母・子などの戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できます(コンピュータ化されていない一部の戸籍を除く)。
遺言書がある場合・法定相続分で分ける場合
遺言書で実家を引き継ぐ人が決まっている場合は、遺言書が必要になり、親の戸籍は死亡の記載があるものでよいなど、集める書類が一部変わります。自筆の遺言書は、法務局に保管されていれば「遺言書情報証明書」が、そうでなければ家庭裁判所での検認が必要です。
法律で決まった割合(法定相続分)のとおりに共有で引き継ぐ場合は、遺産分割協議書と印鑑証明書は不要です。
ここに挙げた以外の書類が必要になる場合もあります。申請の前に、記事末の出典(法務局の資料)と、管轄の法務局の案内を確認してください。手続きは自分で申請することも、司法書士に依頼することもできます。
ステップ3:査定を受けて、だいたいの価格を知る
名義の手続きと並行して、実家がいくらくらいで売れそうかを調べます。不動産会社に査定を頼むと、周辺の取引事例などをもとに見込みの価格を出してもらえます。
査定を受けるときのポイントは次のとおりです。
- 1社だけでなく、複数の会社に査定を頼んで比べる
- 査定額が高いことだけで決めず、その価格の根拠を聞く
- 実家が遠方にある場合は、現地に行かずに進められるかも確認する
査定額はあくまで「売れそうな価格の見込み」で、その金額で売れることが約束されたものではありません。
ステップ4:売り方を選んで、売却する
相続した家の売り方には、主に次のような方法があります。それぞれに向き・不向きがあるので、事情に合わせて選びます。
| 売り方 | しくみ | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 仲介 | 不動産会社に買い手を探してもらう | 時間をかけてでも、できるだけ高く売りたい | 買い手が見つかるまで時間がかかることがある。仲介手数料がかかる |
| 買取 | 不動産会社に直接買い取ってもらう | 早く現金化したい、古い家のまま手放したい | 一般に、仲介で売るより価格は低くなりやすい |
| 解体して更地で売る | 建物を壊してから土地として売る | 建物が古く、そのままでは買い手がつきにくい | 解体費用が先にかかる。1月1日に住宅がないと土地の住宅用地特例が受けられず、固定資産税が上がる場合がある |
仲介と買取の違いは古い実家を売る方法:仲介と買取の違い、更地にするかどうかは更地にして売るか、古家付きで売るかで詳しく比べています。
売るときに用意する書類
売買の契約や引き渡しのときにも書類が必要です。何が必要かは売り方や不動産会社によって違うため、依頼する会社に早めに確認してください。相続登記が終わると、法務局から新しい所有者に「登記識別情報」が通知されます。売るときに使う大切な情報なので、なくさないように保管しておきます。
どの方法でも、売買契約を結んだあと、代金の受け取りと物件の引き渡しを行って売却は完了です。家の中に残っているもの(家財)の片付けが必要かどうかも、売り方によって変わります。片付けについては片付けるの記事を参考にしてください。
ステップ5:売った後の税金を確認する
家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、所得税・住民税がかかり、確定申告が必要になります。
亡くなった親が一人で住んでいた家を相続して売る場合、条件を満たせば、譲渡所得から 最高3,000万円(2024年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上の場合は 最高2,000万円)を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306)。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前 に建てられた家であること
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 特例の対象となる売却は 2027年12月31日まで であること
このほかにも、売却代金や耐震・取り壊しに関する条件、市区町村が発行する確認書などが必要です。使えるかどうかで手元に残るお金が変わるため、売る前に 記事末の出典(国税庁)で条件を確認し、迷う場合は税務署や税理士に相談してください。
まとめ
相続した実家を売るときは、「誰が相続するか決める → 書類を集めて相続登記 → 査定 → 売り方を選んで売却 → 税金の確認」の順で進みます。
- 相続登記は義務になっているので、売るかどうかに関わらず早めに手続きする
- 書類は、遺産分割協議・遺言書・法定相続分のどれで相続するかによって変わる
- 査定は複数の会社に頼み、価格の根拠を比べる
- 仲介・買取・更地にして売る、それぞれの向き・不向きを知ってから選ぶ
- 空き家の特例が使えるかどうかは、売る前に条件を確認しておく
売るかどうか迷っている段階なら、まずは戸籍などの書類集めを始めておくと、どの道を選んでも手続きが早く進みます。