更地にして売るか、古家付きで売るか
制度に関する情報は 時点で公式サイトを確認しています。最新の内容は記事末の出典でご確認ください。
築年数がたった実家を売るとき、「建物を壊して更地にしたほうが売れやすいのか」「古家付きのまま売ったほうがいいのか」で迷う人は少なくありません。更地にすると買い手にとって土地の使い道が分かりやすくなる一方で、解体費用が先にかかり、税金が上がる場合もあります。
この記事では、更地にして売る場合と古家付きで売る場合を比べ、判断のときに確認しておきたい税金と手続きを整理します。どちらが有利かは家の状態や立地によって変わるため、「こうすれば必ず得」という答えはありません。判断の材料として使ってください。
更地と古家付きの比較
| 比べる点 | 更地にして売る | 古家付きで売る |
|---|---|---|
| 売る前の費用 | 解体費用が先にかかる | 解体費用はかからない |
| 買い手から見た印象 | 土地の広さや形が分かりやすく、新しく建てる計画を立てやすい | 建物をそのまま使いたい人や、自分で建て替えたい人が対象になる |
| 固定資産税(土地) | 1月1日に住宅がないと、住宅用地の特例が受けられず、税金が上がることがある | 住宅が建っていれば、原則として住宅用地の特例が続く |
| 売った後の責任 | 建物の不具合をめぐる責任はなくなるが、土地(地中に残った物など)について責任を負う場合がある | 建物の不具合について、契約しだいで責任を負う場合がある |
| 気をつけたいこと | 壊した後に建て直せない土地ではないか、事前の確認が必要 | 建物の状態によっては、買い手が見つかりにくいことがある |
更地にすると固定資産税が上がることがある
住宅用地の特例とは
住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税と都市計画税の計算のもとになる額(課税標準)が軽くなる特例があります(地方税法第349条の3の2・第702条の3)。東京都主税局の案内では、軽減の内容は次のとおりです。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分) | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
| 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地) | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
建物を壊して更地にすると、この特例が受けられなくなります。その結果、土地の固定資産税・都市計画税が上がることがあります。実際にどのくらい上がるかは、土地の評価額や税額の計算のしくみによって異なるため、所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)に確認してください。
判断は毎年1月1日の状態で決まる
固定資産税は、毎年 1月1日 の状態をもとに、その年度の税金が決まります(地方税法第359条)。東京都主税局の案内でも、1月1日の時点で住宅がなければ、建築中や建築予定の土地であっても住宅用地にはならないとされています。
そのため、たとえば年末に解体を終えて、翌年に土地が売れた場合、翌年度の土地の税金は住宅用地の特例がない状態で計算されます。解体の時期を決めるときは、売れる見込みの時期と1月1日の関係を意識しておくと、思わぬ負担を避けやすくなります。
なお、住宅を取り壊したときは、市区町村によっては申告が必要です。東京都の場合は、申告が必要になった年の翌年1月31日までに申告するよう案内されています。
空き家のまま放置しても特例が外れることがある
「税金が上がるなら、建物を残しておけばいい」とも限りません。2023年12月に施行された改正空家法では、管理が不十分な空き家として市区町村から勧告を受けると、建物が建っていても住宅用地の特例の対象から外れます(地方税法第349条の3の2)。建物を残す場合は、管理を続けることが前提です。
空き家の3,000万円特例は、どちらの売り方でも使える
亡くなった親が一人で住んでいた家を相続して売る場合、条件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円(2024年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上の場合は最高2,000万円)を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306)。この特例は、次のどの売り方でも対象になります。
| 売り方 | 条件のポイント |
|---|---|
| 家屋をそのまま(敷地と一緒に)売る | 売る時点で、家屋が一定の耐震基準を満たしていること |
| 家屋を全部取り壊してから、土地を売る | 相続の時から取り壊しの時まで家屋を事業・貸付け・居住に使っていないこと、取り壊した後に土地を建物などの敷地に使っていないことなど |
| 古家付きで売り、買主が耐震改修または取り壊しをする | 2024年1月1日以後の売却で、売った年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たすか取り壊しが行われること |
3つ目の方法ができたことで、売主が解体しなくても、古家付きのまま売って特例を使える道が広がりました。ただし、買主が期限までに工事をしなければ特例は使えないため、売買契約でどう取り決めるかを不動産会社とよく相談してください。
どの売り方でも、共通して次のような条件があります。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること
- 相続の時から売る時まで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに売ること
このほかにも条件や必要な書類があります。使えるかどうかで手元に残るお金が大きく変わるため、解体や売却の前に 記事末の出典(国税庁)で確認し、迷う場合は税務署や税理士に相談してください。
更地にする前に確認したいこと
壊した後に建て直せる土地か
建築基準法では、建物の敷地は、原則として道路に 2メートル以上 接していなければならないとされています(第43条)。この条件を満たさない土地では、今ある建物を壊すと、新しく建てられない場合があります(いわゆる「再建築不可」)。
こうした土地で建物を壊してしまうと、買い手がさらに見つかりにくくなるおそれがあります。解体を決める前に、不動産会社や市区町村の建築指導の窓口で、建て直しができる土地かどうかを確認してください。
解体工事の届出
床面積の合計が80㎡以上の建物を解体する工事は、建設リサイクル法の対象になります。発注者(工事を頼む人)は、工事に着手する日の7日前までに、都道府県知事に届け出なければなりません(実際の窓口は自治体によって異なります)。手続きは解体業者が代わりに行うこともあるため、見積もりの段階で、届出を誰が行うのかを確認しておきます。
建物の滅失登記
建物を取り壊したら、登記簿からその建物を消す「滅失登記」が必要です。不動産登記法では、建物の所有者(登記名義人)は、建物がなくなった日から 1か月以内 に申請しなければならないとされています。相続した建物の場合は、誰が申請するかもあわせて確認してください。
解体費用と補助金
解体費用は、建物の構造や大きさ、立地などによって大きく変わります。複数の解体業者から見積もりを取り、作業の範囲(家財の処分を含むか、ブロック塀や庭木の撤去を含むかなど)をそろえて比べてください。自治体によっては、古い空き家の解体に補助制度を設けていることもあるため、実家がある市区町村に確認しておきます。解体費用の考え方と補助金の調べ方は、今後解体と残すの記事で紹介していきます。
どちらを選ぶか迷ったら
迷ったときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 建て直しができる土地か を確認する(できない場合は、更地にする前に慎重に考える)
- 空き家の3,000万円特例 が使えるか、使うならどの売り方にするかを確認する
- 不動産会社に、更地と古家付きの両方の場合で査定してもらう
- 解体費用の見積もり と、更地にした後の固定資産税の見込みを比べる
査定額と解体費用、税金を並べて比べることで、どちらが手元に残るお金が多いかを具体的に考えられます。仲介と買取の違いは、古い実家を売る方法:仲介と買取の違いで整理しています。
まとめ
- 更地にすると、買い手には分かりやすくなるが、解体費用が先にかかる
- 1月1日に住宅がないと、土地の固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が受けられず、税金が上がることがある
- 空き家の3,000万円特例は、そのまま売る・取り壊して売る・買主が翌年2月15日までに改修か取り壊しをする、のいずれでも使える
- 解体の前に、建て直しができる土地かを必ず確認する
- 80㎡以上の解体は工事の7日前までに届出が必要。取り壊した後は1か月以内に滅失登記をする
税金や手続きの扱いは、自治体や個別の事情によって変わることがあります。最新の情報は、記事末の出典と、実家がある市区町村の窓口で確認してください。
出典・参考
- 地方税法 第349条の3の2・第359条・第702条の3(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)
- 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)(東京都主税局)(新しいタブで開きます)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)(新しいタブで開きます)
- 建築基準法 第43条(敷地等と道路との関係)(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第10条(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令 第2条(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)
- 不動産登記法 第57条(建物の滅失の登記の申請)(e-Gov法令検索)(新しいタブで開きます)